経営戦略

日本経済は、新型コロナウイルスにおける感染状況が落ち着きを見せ、コロナ禍脱却の動きが活発化する一方で、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとした地政学的リスクの高まりや、中国経済の動向、資源価格・物価の高騰、米国の利上げに伴う影響等、経済環境は依然として不透明な状況で推移することが予想されます。このような状況の中、当社は、以下の施策を実施することにより、次なる成長に向けての基盤固めを行ってまいります。

マネジメント

コーポレートガバナンス

当社では、長年にわたりコーポレートガバナンスの充実に努めた結果、コーポレートガバナンスの強化が会社の質の向上と収益性の向上に寄与すると考えており、今後も従業員の意識の徹底と継続的な内部統制システムの改善を実施し、その充実に努めてまいります。
また、従業員だけでなく、経営者が常に真摯に取り組む姿勢を持つことが最も重要なことであると考えており、より一層高い意識を持ち経営に取り組んでまいります。
さらに、組織の内外の変化に対応するために、数年に一度、徹底的な見直しが大切であると考えておりますが、これまで、東京証券取引所への上場時やDX化等を目的とした新基幹システムの構築時に全体的な見直しに取り組んでまいりました。このような取り組みを重ねながら、会社の質を向上させ、ステークホルダーの皆様に、より信頼していただける組織を目指してまいります。

人材の獲得と育成

当社は、商社にとって最も重要な経営資源は人材であると考えており、これからも有能な人材の採用と教育に力を入れてまいります。
少子高齢化の中で、国内においては人材獲得が難しさを増しておりますが、当社においては全社的な努力により、質・量ともに計画通り採用いたしております。今後も性別や国籍を問わず、未来の南陽の中核となる人材の獲得に向けて、会社の知名度の向上や、働き甲斐のある職場作りに努めるとともに、社内外での教育を通じて人材の質の向上にも努めてまいります。

働き甲斐のある職場作り

当社では50年以上にわたり「働き甲斐のある職場作り」を経営理念の一つとして掲げてまいりました。働き方改革の実践として、2023年4月より人事制度を改定し、エリア職とフリー職に職種区分を変更いたしました。転勤可否による差はあるものの、性別を問わず、能力に対して評価する仕組みを設けており、次世代リーダーの育成や女性管理職の増加に努めてまいります。また、長時間労働の防止、同一労働・同一賃金、子育て支援などの取り組みをこれまで以上に推進するとともに、2023年7月より稼働する新基幹システムを活用し、労働生産性の向上をはかりながら、より良い職場環境の創造に努めてまいります。

マーケティング

当社は、様々な商品・サービスを提供しておりますが、今後、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、以下のような社会のニーズに焦点を当て、さらなる社会への貢献と事業の発展に取り組んでまいります。

新商品開発に向けた取り組み(SDGs:9.産業と技術革新の基盤をつくろう)

当社は、機械商社として数多くのお客様やサプライヤーの間に立ち、ニーズと技術のマッチングを行ってまいりました。
産業機器事業では、現在、産業界における省力化ニーズの高まりを受け、様々な製品の検査工程に焦点をあて、国内外の優良なベンチャーメーカーの発掘を行い、商品展開を行っております。今後も、お客様のニーズを的確に捉え、商品の拡充に努めてまいります。

国土強靭化に向けた取り組み(SDGs:11.住み続けられるまちづくりを)

先進国においては、社会インフラの老朽化が進んでおり、その保全が大きな問題となっております。当社は、都市の下水管の更生工事に不可欠なロボットに関して、国内で80%程度のシェアを持つ独自商品を展開しております。今後、大都市だけでなく地方都市においても下水道管の老朽化問題の拡大が想定されることから、ニーズに対応できる組織の構築と、お客様のご要望に合わせた新製品の開発に努めてまいります。

環境保全に向けた取り組み(SDGs:13.気候変動に具体的な対策を)

近年、地球環境の変化により温暖化が進み、自然災害が相次ぐ等、その影響が顕著に表れております。このような中、当社では地球環境の保全と自然災害等の対応に向け、以下の取り組みを行っております。
まず、ISO14001を2002年に取得し、省エネルギーやリサイクル等の環境関連商品の拡販を環境目標として掲げてまいりました。また、建設機械事業では、レンタル用機械の排ガス規制適合車への変換を計画的に進めております。さらに、自然災害の多発する九州地域においては、災害復旧や国土強靭化に対応できるように機械を取り揃えております。
今後も、環境に配慮した商品の拡販や災害対応に向けた取り組みに注力してまいります。

省人化に向けた取り組み(SDGs:8.働きがいも経済成長も)

日本における社会的課題の一つである少子高齢化が急速に進む中で、労働生産性が諸外国に比べ低いことが挙げられております。当社では、産業界の省人化に寄与することで、この問題の解決に取り組んでまいります。
産業機器事業では、長年培ったロボットやFA市場でのノウハウと、製造業である子会社3社の技術開発力を活用し、検査装置をはじめとする様々な省人化に関する商品の提供に努めてまいります。また、建設機械事業では、災害復旧作業をはじめとする工事現場での人手不足が顕著になる中、今後はICT建機の普及が見込まれることから、プロジェクトチームを作り、積極的に販売展開を進める体制を整えてまいります。

ファイナンス

キャッシュフローと事業の持続性

当社は、安定した財務体質を活用して、企業使命を果たすべく投資を行い、事業の持続性と発展を達成してまいります。
これまで20年以上、営業キャッシュフローは黒字を計上し、バランスシートもその健全さを増しております。この安定した営業キャッシュフローと財務体質を利用して地球環境の変化や少子高齢化等に伴う諸問題の解決に貢献するため、設備投資やM&Aなどの投資を積極的に行ってまいります。
今後も、重要な社会の諸問題の解決に貢献することで、企業使命を果たし、事業の長期的持続と更なる発展を目指してまいります。

株主還元の強化

事業をとおして、すべてのステークホルダーの皆様のお役に立つために、株主の皆様には、これまで以下のような施策を行ってまいりました。
2019年5月に配当方針を見直し、配当性向については連結純利益の30%程度を維持するとともに、利益水準に関わらず安定配当として1株につき年間30 円の配当を維持(ただし、連結純利益が配当総額を下回る場合は、連結純利益の範囲内での配当額)することといたしました。また、2015年度からは株主の皆様への利益還元の機会を充実させるため中間配当を実施し、剰余金の配当についても年2 回行うことといたしておりますが、2017年3月期からは、株主還元の一層の強化をはかるため、株主優待制度を導入し、3月末に100株以上保有する株主の皆様へ一律1,000円分(保有期間3年以上は1,500円分)のクオカードを贈呈することといたしました。
当社は、今後とも事業の持続的な発展に努めながら、積極的に株主の皆様への還元に努めてまいります。

会 計

新システムの構築

当社では、2023年に新たな基幹システムの稼働に向けて、現在、システム構築に取り組んでおります。
新基幹システム開発の目的は以下の4点です。
まず、第一に日常業務の効率化をはかります。これにより長時間労働の防止等の職場環境の整備を容易にするとともに、収益性の向上を目指します。
第二に内部統制システムとの連携によって、コーポレートガバナンスの充実をはかってまいります。システムに内部統制ルールどおりに動く仕組みを組み込むことにより、ケアレスミスの抑制を行う等、人に頼らない内部統制システムの構築を目指します。
第三にグループ全体のシステムの連携強化を行い、組織内での情報の共有化と会計のスピードの向上をはかります。関係会社とのデータベースの統一をはかることで、組織内の情報共有を容易にし、あわせて会計のスピードを高めることにより、意思決定の速度と会計情報の伝達スピードの向上をはかります。
第四にセキュリティーの強化により安全性の向上を目指します。可能な限り、クラウドコンピューティングに移行し、企業で頻発する外部からの攻撃に対応できるシステム構築を行ってまいります。
今後も、時流にあわせて、先進技術等を取り入れながら、業務改善、生産性向上に努めてまいります。

国際会計基準(IFRS)への対応

企業のグローバル化と証券市場のボーダレス化が進み、外国企業への投資を検討する投資家が多数存在するようになった今日、IFRSを自国の会計基準として採用している、または採用しようとしている国は、既に100ヶ国以上に及んでおります。日本においては、適用時期が延期され、任意適用を実施している企業は少数ではありますが、グローバル化の流れの中で、将来的にはIFRSの採用は避けられないテーマであると考えております。
なお、IFRSの採用にあたっては、当社を含め日本の上場企業が採用してきた会計基準から大きく処理方法が変わることから、その対応には多くの時間と労力を要するものと考えられます。このため、当社においては、今後の金融庁の動きに注目する傍ら、IFRSへの対応について更に検討を重ねてまいります。